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レーザー加工技術

レーザー発振器を利用したレーザー加工は日々様々な研究が行われています。発振器の種類による加工結果の違い、パルス幅や繰り返し周波数による違い、波長による違い、光学系の違い、その他様々な工夫による違いなど研究の方向性も様々です。ここではそのような研究から生まれたレーザー加工の研究結果をご紹介していきたいと思います。
高いロバスト性のレーザー溶接装置による加工 レーザー加工技術No.016


ロバスト性とは、不確定な変動に対して特性が現状を維持できる能力のことで、YAGレーザーの発振原理の特性から熱レンズ効果と呼ばれるビーム品質の時間劣化や光学的な特性から同時複数分岐照射で同じビーム品質を照射するのが困難という問題があった。今回この問題を発振器の冷却機構や光学機構を工夫して連続照射と同時分岐照射の溶け込み安定度を向上させた。
今回はこのレーザーを使用した加工例を紹介するとともに加工の違いについて紹介したいと思います。

はじめに
 ランプ励起YAGパルスレーザーは生産現場で多く使われているが、発振原理の特性から熱レンズ効果と呼ばれるビーム品質の時間劣化や光学的な特性から同時複数分岐照射で同じビーム品質を照射するのが困難という問題があった。今回YAGレーザーの要素である発振器の冷却機構や光学機構を工夫して連続照射と同時分岐照射の溶け込み安定度を向上させた。

熱レンズ効果
 照射された光が物体に吸収されると、光吸収の起きた部分とその周辺部分の密度および屈折率が変化する。つまり、レーザー光のように強度が大きい光がYAGロッドに照射すると、YAGロッドの中では、熱のたまりやすい中心部と熱が放射される外側では[図1]のように温度分布が発生し、レーザー光が通過する部分の屈折率が周辺部分の屈折率よりも大きく変化するため、レンズ作用を起こしてしまう。図では丁度、両凸レンズのような温度分布が発生している様子を表しており、これにより本来は平行に入射されたレーザー光が平行に出射されなくてはならないレーザー光が焦点を結んでしまう。これを熱レンズと呼んでおり、レーザー光を安定して発振するための不安定要素となっている。しかも熱レンズ効果はレーザーの繰り返し周波数により変化してしまうため微細エリアの加工や焦点コントロールがシビアな加工においてはよく問題にされる項目となっている。


[図1]熱レンズ効果

レーザーによる小型電子部品の溶接
 電子機器の小型化やニーズにマッチした製品開発により、モーター、光モジュール、ランプ電極、コネクタ、電池など小型の電子部品における接合が増加している。従来、これら小型電子部品の接合には抵抗溶接、ネジ止め、加締め、ハンダ付けなどにより接合が行われていた。しかし、より高品質で信頼性の高い接合を求めたり、部品点数の削減や環境適合性を求めたり、安定した量産性を求めたり、製品の小型化によりこれまでの接合方法が不可能になったりと様々な要素からレーザー溶接の需要が高まりレーザー溶接の導入が伸びている。また、レーザー溶接を導入することで自動化の範囲が広まり、コストダウンにもつながることもレーザー溶接導入をのばしている要素のひとつとなっている。


[図2]モーターのレーザーシーム溶接
 では、次に実際に小型電子部品のどのようなところへレーザー溶接による接合が行われているかを紹介する。 [図2]はモーターへのレーザー溶接が行われた写真となっている。軸受け部品の接合にレーザーを用いてレーザー光を重ね照射することによりシーム溶接を行っている。精度や強度はもちろんのこと目に見える部分でもあり仕上がりのきれいさも要求される部分となっている。
 

[図3]高融点材料と熱伝対の溶接
[図3]のように溶接部が微小なスポットの場合においてもレーザー溶接は優位性を持っている。レーザー溶接は照射する時間や出力によって溶接の度合いを比較的簡単に制御できるためピンポイントで行いたい溶接などにも向いている。

[図4]皮膜線材料のハンダレス接合(溶接前)

[図5]皮膜線材料のハンダレス接合(溶接後)

 上記のような電子部品におけるレーザーによるスポット溶接、シーム溶接ではランプ励起YAGパルスレーザーが使われる。これは小さいエネルギー量だが、高ピークのレーザー発振が可能という特徴があるからだ。
 ランプ励起YAGパルスレーザーによる溶接を生産で使うにあたり重要視されるのがロバスト性となってくる。ロバスト性とは『不確定な変動に対して特性が現状を維持できる能力のこと』を意味している。ランプ励起YAGパルスレーザーはすでに多くの生産現場で使用されているが、発振原理の特性から熱レンズ効果と呼ばれるビーム品質の時間劣化や光学的な特性から同時複数分岐照射で同じビーム品質を照射するのが困難という問題があった。これが不確定な変動にあたり、これをどのように制御するかが製品の安定加工に直接つながるため重要なポイントとなっている。


[図6]ロバスト制御なし

[図7]ロバスト制御あり
 上の[図6]と[図7]はロバスト制御を行った場合と行わなかった場合の比較写真となっている。 [図6]のロバスト制御なしとは、何の工夫も行わないレーザーで加工を行うことで、[図7]ロバスト制御ありとは、エネルギーや繰り返し周波数の変化による熱レンズ効果を考慮した冷却機構や光学機構を工夫したレーザーによる加工を意味する。
 ロバスト制御を行わないとレーザーの安定性の乱れ幅が大きく、加工点においても加工結果が違うのが目視でも確認できると思う。中心部は溶け込み量が深かったり浅かったりしているせいで固まった際の形状が異なっている。溶け込み深さが異なると言うことは溶接強度の違いにもなり、安定した生産が行えず、歩留まりが悪くなるばかりだけでなく、仕上がりのきれいさも損なうため付加価値も下がってしまう。
 ロバスト制御を行った加工では溶け込み深さが安定しているため表面の仕上がりも肉眼では変わらないほどの仕上がりとなっており、品質の高い加工といえる。これによって生産の歩留まりの向上や同時分岐溶接の利用の向上が期待でき、溶接条件の安定性が非常に重要精密な電子部品の安定した加工が行える。これまでレーザー利用を断念していたり、生産の歩留まりが問題となっていたマーケットでのレーザー加工の採用が増加すると期待される。


[図8]レーザー溶接部の断面
 YAGレーザーの要素である発振器の冷却機構や光学機構を工夫して連続照射と同時分岐照射の溶け込み安定度を向上させた高いロバスト性の発振器により、連続照射でも同一の形状のナゲット形状、溶け込みの深さの加工が可能。[図8]レーザー溶接部の断面の写真となっており、高いロバスト性の発振器を使用することによりこのように安定した加工が行えることを証明している。


まとめ
 以上で今回の加工実験の報告を終わります。今回は通常のレーザーによる加工とロバスト性を高めたレーザーによる加工を比較することで安定性の違いを見ていただいた。加工仕上がりは写真を見ただけでもわかるほど品質の違いがあり、ロバスト性を高めたレーザーによる加工では品質の高い加工が行え、これによって生産の歩留まりの向上や同時分岐溶接の利用の向上が期待でき、溶接条件の安定性が非常に重要精密な電子部品の安定した加工が行える。まずは、今回使用したレーザーを使用していただきその違いを体感していただきたい。

レーザー溶接機 LR-20

上記の加工で使用したシステムは、メカトロジャパンのレーザー溶接機「LR-20」です。このレーザー溶接機「LR-20」は低出力ランプ励起YAGレーザー溶接装置で、ロバスト性(分岐照射、連続照射における安定性)に優れており、量産向けに適したレーザー溶接機です。  集光性が高く、波形制御が可能でこれまでレーザー溶接が困難であった銅・アルミなどの高反射材料や高融点材料でも高い加工性能を実現し、 電子部品の金属加工・溶接に最適です。  

主な仕様
レーザー溶接機 LR-20
レーザータイプ:YAG
波長:1064 nm
出力:20 W
パルス繰返し速度:0.1-20 Hz
パルスエネルギー:20 J/P
パルス幅:20.0 ms
分岐数最大:4分岐



レーザー溶接機 LR-20

これらの製品に興味があるようでしたらレーザー・コンシェルジェへご連絡ください。
こちら→info@laser-concierge.com

編集部から
レーザー溶接はすでに多くのマーケットで利用されていますが、小型の電子部品への導入はニーズの高まりと共にマーケットが拡大しています。リーマンショックによる不況で今は一時的に冷え込んでいますが、これまで板金をメインとしていたレーザー溶接に新たなマーケットが広がっており、これからの活躍が期待されます。私たちはレーザー発振器だけでなく、光学系を工夫することにより、マーケットニーズに対応した製品を作り出せば、レーザーメーカーやシステムメーカーにもまだまだチャンスがあると思っております。レーザー加工を行いたいユーザーの真意をくみ取り、的確な対応を取っていくことがレーザー加工のマーケットを広げていくことになるため、今後もこのようにレーザー加工に創意工夫を積極的に取り入れられればと思います。



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