企業訪問

企業訪問


 今回の企業訪問は静岡県に本社を置くエンシュウ株式会社【〒432-8522 静岡県浜松市南区高塚町4888番地】(以下エンシュウ) を訪れ、同社のレーザー加工機部門である光関連部を訪れインタビューを行った。 エンシュウのレーザー加工機部門は浜松ホトニクス株式会社との連携・協業により「高出力半導体レーザー溶接システム」を開発し、製品として市場に投入している。さらには「高出力半導体レーザー樹脂溶着システム」の開発・販売も行っている企業だ。

LC:はじめまして、レーザー・コンシェルジェです。
エンシュウ:初めまして、 光関連部 営業の村松です。隣が部責任者の鈴木でその隣が技術担当の加藤です。
LC:私達はレーザー加工の情報サイトを運営しております。今回は高出力半導体レーザーを搭載した御社のシステムについて色々お話しをうかがえればと思いますので、宜しくお願いします。
村松:わかりました。 この取材を通じてエンシュウのことをもっと多くの方に知っていただければと思います。
LC:ありがとうございます。
村松:こちらこそ、宜しくお願いします。

エンシュウについて
LC:では、まず初めにエンシュウについてお聞かせ下さい。
村松: エンシュウはもともと繊維機械を製造していた会社で約90年の社歴を持っています。現在のメインは工作機械となっており、主に自動車関連のお客様に生産システムを納入する工作機械事業部門と、それら装置を使用し金属切削を行った二輪、自動車用金属部品を納入する部品事業部門、この2部門が弊社の主たる事業となっております。そして今回ご紹介させていただく光関連部が今後の新しい事業として6年ほど前にスタートしました。
LC:もともと工作機械を中心とされていて、なぜレーザー加工装置を始めるようになったきっかけは何だったのでしょうか。
加藤: フォトンバレー計画というのが浜松にありまして、光に関連した地域の計画があったのですが、その中で浜松には「浜松ホトニクス」という大きな光関連の企業がレーザー発振器の製造販売を行っており、その企業と大学および地域の企業が集まって技術で地域を盛り上げていこうという計画がありました。具体的には地域新生コンソーシアムを利用し、「浜松ホトニクス」と「静岡大学」、「大阪大学」そして地元の企業で生産用のレーザー加エシステムを開発していこうと言うことになりました。その開発に参加したことがレーザー加エシステムを開発するきっかけとなりました。
LC:なるほど。

レーザ部門のあるエンシュウ本社


写真左から村松営業課長、鈴木部長、技術課加藤氏
鈴木: 最初のシステムを立ち上げるのに3年かかり、実際の製品化はその後と言うことになります。
村松:4kWの半導体レーザーが商業ベースに乗った時期ごろ、コンソーシアムが立ち上がってだいたい4年ごろに初号機の納入があり、そこから商売が始まったと言うところです。
LC:ユーザーはやはり自動車メーカーや関連の部品メーカーが多いのでしょうか。
村松: そうですね、ベースになっているのが私どもの工作機械のユーザーとなっておりますので、そのユーザーはほとんどが自動車関連となっているので、結果として自動車関連のユーザーがほとんどです。
鈴木:地域的にもそうですが、弊社の元々行っていた事業のマシニングセンターを使用していたユーザーが自動車関連が圧倒的に多かったと言う流れの中で営業をスタートしたこともあります。

装置について
LC:装置としては大きく分けて金属溶接用装置と樹脂溶着用装置が有りますが、ユーザーの比率はどちらが多いですか。
村松:やはり私どもとしては金属の溶接が圧倒的ですね。
鈴木:当初は高出力半導体レーザーDDLの特長を揚げて従来のYAGやCO2の市場に参入してきました。現在では、レーザー発振機も30Wから6kWまでラインアップが進み加工アプリケーションの開発と共に幅広いレーザー加工に対応できるようになっています。このような状況で営業活動を行っていますが、主力としては金属溶接を考えております。
LC:なるほど。
鈴木:国内ではkW未満の半導体レーザーは何社か製造されておりますが、kW以上となると「浜松ホトニクス」のみです。今までは高出力半導体レーザーと言えば外国製のみであったのですが、この国産というメリットはユーザーに非常に高く評価されています。浜松ホトニクスとの協業は大きな原動力となっています。

高出力半導体レーザ搭載デモ加工機
LC:今でもその関係は続けられているのですか。
鈴木:そうですね 。日本国内のユーザーは、やはり国内メーカーを希望される場合がほとんどで、装置が国産だと何かあっても日本語で意思疎通が図れますし、時間的にも対応が取りやすいといったメリッ トもあります。
LC:やはり何かあれば国内メーカーの方がやりとりしやすいですしね。
村松:産業用の装置に関しては特にまず、国内装置ありきが前提となっています。それはサポートを重要と考えておられる結果だと思います。そういった意味では我々の装置の強みになっていると思っています。
LC:浜松ホトニクスのサポートはどうですか?
鈴木:モジュールとしてのレーザーよりもデバイスとしての販売が圧倒的に多いのですが国産高出力半導体レーザー普及のためにもしっかりとサポートを行っていただいています。
村松:主に自動車関連メーカーに装置を納入させてもらっていますが、私たちがエンドユーザーと発振機メーカーのバッフアにもなるので発振機メーカーもその点を理解していただいて、対応していただいています。それでもユーザーの要求は高く「もっともっとと」要求が和らぐことはありませんが。
鈴木:特に緊急時の対応などにおいては、協力体制が重要と考えています。
LC:売り上げ的には他の事業部とくらべて、やはりまだまだなのですか。
村松:まだまだです。
LC:装置単価としては工作機械から比べると高価なのですか。
鈴木:製品の付加価値により異なっています。
LC:レーザーでしか出来ないことがレーザーの最大の強みですからね。
鈴木:レーザーでしかできない工法、もしくは圧倒的に速いかですね。
LC:レーザーの活躍の場はまだまだ限られているのですか。
鈴木:ラインの一部をレーザーに変える場合は切り替えを行いやすいのですが、そうでない場合は難しいですね。
LC:競合に関してはどうですか。自動車関連は特に厳しいと聞きますが。
村松:いつもどことぶつかるって言うのはありません。特に半導体レーザーはある意味特殊な溶接用になっていますから。価格の競争をするのではなく特徴を活かした営業を心がけています。
鈴木:レーザーありきという形からではなく、半導体レーザーが活かせる部分へ導入されることが多く、エンシュウの良さを理解していただいて購入頂いていると思います。
村松:試作加工では非常に多くのサンプルを経験しておりますし、今も多くの課題をいただいております。これらはお客様と一緒になって工法開発を行っており、試作がうまくいけば装置導入へと、自然の流れになっています。

試作について
LC:試作加工の時間は結構長いものなのですか。
鈴木:色々ですが、従来の工法で出来なかったことを行う場合だと、長いスパンでとらえているお客さんも多いのです。声がかかってから設備を導入していただくまでには長い道のりとなることがあります。
村松:車自体も軽量化, 省エネ化が進んでおり, レーザーも一つのツールとして使用されてきています。工法開発がうまくいけば時期モデルを待たずに利用したいというお話しもあります。そうすると時間との戦いにもなってきますが。




デモを行うキャリアセンター
鈴木:環境にも敏感になっていますし、設備もそういう方向です。レーザーもそういう観点で導入を検討されるケースが多くなっています。
LC:レーザーシステムを製作されているのはこちらの本社工場になりますか。
村松:そうです。こちらの工場になります。
LC:サンプル加工もこちらの工場内ですか。
村松:この建物の1階にショールームを兼ねたキャリアセンターという部屋があり、そちらに3台のレーザーシステムが常設されています。
LC:サンプル加工の担当者も数名おられるのですか。
村松:試作のグループは4人の専属とそれ以外の技術が行う場合もあります。

3台のデモ加工機を常時設置
LC:光関連部には全体で何名ぐらい所属されているのですか。
鈴木:営業と技術で20名ほどです。製造関係は工作機械関連の協力を得ています。
LC:レーザーシステムの出荷台数は増加しているのですか。
村松:4kW搭載のシステムが完成してまだ数年しか経っていないので、年間10台というオーダーまではいきませんが、着実に数は伸びています。
鈴木:エンシュウがレーザーシステムをやっているって言うのもだいぶ浸透してきましたが、もっと拡げなくてはいけないと思っております。
村松:そういった意味では今回の企画に感謝しております。これを機にサンプル加工が増えることを願っています。

エンシュウの特徴
LC:御社の製品の強みを一言で言うと何になりますか。
村松:工作機械メーカーがレーザーシステムを作っていますので過去の工作機械の経験を使えますし、ロボットや位置決めなどNCの技術はレーザーシステムにも大いに利用できますので、その点は強みです。
鈴木:できあいの機械を使うことはないので、ハンドリングの部分も含めて生産現場に適したシステムを提案できることはお客様にも喜んでいただいています。
LC:今後の動向はいかがでしょうか。
鈴木:ユーザーの声にも左右されますが、溶接だけでなく焼き入れなど半導体レーザーの得意とする分野のアプリケーションを拡げていきたいと考えております。
LC:タクト的にレーザー出力を求められるお客さんは多いですか。
村松:タクトと言うよりもコストパフォーマンスの追求ですね。意外と出力を上げてもコストパフォーマンスを上げるのは難しいですから。
鈴木:出力だけ見てもバランスが取りにくいですから。
LC:ではデモルームを拝見させていただけますでしょうか。
村松:了解しました。では下の階へ

デモルーム(キャリアセンター)
村松:
こちらには3台のレーザーシステムを設置しております。奥の装置はサンプル加工を行っているのでお見せできませんが。
加藤:ちらがレーザーシステムのL1 です。こちらのコントローラーでヘッドを稼働させます。軸数も多いので複雑に動かせるのですが、それでも立体で複雑なワークが増えておりますので治具を工夫する必要が増えていますね。
LC:大型のワークは対応できますか。
加藤:このドアを外すとかなり大きなワークでも対応できます。
LC:なるほど。わかりました。
加藤:このレーザーが4kWです。このように自由にヘッドを動かすことが出来ます。
LC:サンプルはありますか。
加藤:うしろのケースに様々な加工サンプルを展示してあります。
LC:こちらですね。
村松:なかなか本当の試作品はお見せすることが出来ないので一般的なものになっていますが。実際には複雑なことも出来ます。
LC:今日は長い時間ありがとうございました。
村松:こちらこそありがとうございました。掲載を楽しみにしています。



加工サンプル

以上、エンシュウ株式会社の企業訪問をお届けいたしました。
撮影はNGだったもののレーザー装置だけではなく工作機械の組み立て工場の隅々までこころよく見学させていただきました。非常に広大な工場の中に数多くの組み立て途中の工作機械があり、出荷先も国内だけではなく、アジア、アメリカなど広範囲な地域への出荷が行われているようでした。
今後も地域の企業とタッグを組んでレーザー加工の本質を見極めたしっかりとした製品を開発される企業だと感じました。海外勢が強いレーザー業界ですが、試作からライン装置製作を行える貴重な企業ではないでしょうか。サンプル加工を行いたいという方は是非、弊社もしくは直接エンシュウ株式会社までお問い合わせください。

高出力半導体レーザー溶接システム L1
エンシュウ株式会社では高出力半導体レーザーを使用したレーザーシステムを販売しています。国産高出力半導体レーザー使用により省エネ・省スペースのシステムです。レーザーヘッドは直交3軸、回転3軸のハイブリッド同時6軸ロボットに搭載されており、高い位置決め精度を実現しています。また、高精度位置決めに加え、ギヤツプ裕度が大きいためビーム位置ずれによる欠陥の発生が少ない加工が行え、半導体レーザーの入熱特性を生かしたスパッタの少ない高品質の溶接を実現しています。
特長
直交3軸+回転3軸の軸構成で高精度
省スペース(冷却器と発振器の小型化)
片持ち構成により、加工空間が広い
ランニングコストが大幅に低減
国産LD搭載の高信頼システム

主な仕様
レーザ種類:LD
波長: 940nm,(808nm)
出力:1kW/2kW/4kW/6kW
動作モード:CW
集光サイズ:0.45 x 2.5mm (FWHM)

高出力半導体レーザ溶接システム L1