プロセス道
第9回 UVレーザーによる特殊な加工例(その1)
レーザーアニーリングに使用されるレーザーについて紹介します。

■UVレーザーによる特殊な加工

さて今回はUVレーザーによる特殊な例を紹介します。レーザー加工と言えば普通はワークを加工するのですが今回ご紹介するのはワークを加工するのではなく、ワークから飛び出たものを利用しようというものです。具体的な名称はアブレーションによるナノパーティクル(粒子)生成とPLD(パルスレーザー堆積法)の2つです。どちらの加工も方法はとても似ています。これらはレーザーを照射するワークをターゲット材と呼びます。ターゲット材にレーザーを照射するとアブレーション加工がされてプルームと呼ばれるプラズマ状のものが発生します。これを急冷するとナノパーティクルが生成されます。またプルームの先に基板を配置するとターゲット材のマテリアルが基板上に堆積されて薄膜を作成することが出来ます。これをPLDと呼んでいます。これらはおおざっぱに言ってしまえば粉のまま回収するか薄膜にするかの違いとなるわけですが、装置は全く違う形態をしています。


構成概略図

では、まず今回はナノパーティクルの生成法です。このプロセスは真空チャンバー内で行います。真空チャンバー内に設置したターゲットにパルスレーザーを照射します。するとターゲットからプルームが発生するのですが、真空中なので粒子は邪魔されず飛んでいきます。チャンバー内を低温にすることにより飛んでいる粒子を急激に冷却し、粒子のまま回収装置へと導きます。そうするとそこにはナノパーティクルが集まります。

実際のプルームの様子
もちろん材料や条件が様々なので簡単に集まらないものも有りますが、この方法では比較的簡単な方法でナノパーティクルを作り出せます。カーボンナノチューブやフラーレンは大気でも十分に集まりますが、他の手法に比べると決して効率がよいとは言えません。UVレーザーでターゲットをたたく最大の理由は表面だけを薄くアブレーションするところに理由がありますから、スパッタでできてしまうものはスパッタ法がコストが安くなることもあってスパッタで行われる方が一般的です。数年後には意外にもレーザーによる有機ナノパーティクル生成なんて言うのが注目になっていたりするかもしれませんね。次回はPLDについてお話ししようと思います。