光のローカス
第3回 光学部品の選択
レーザーにも種類があるように光学系に使用するレンズやミラーにも種類があります。
選択するときにはレーザーに合ったものを使用する必要があります。

■光学材料
レーザーには種類があります。遠赤外線の領域であるCO2(炭酸ガス)レーザーから真空紫外の領域の光を出射することのできるエキシマレーザーまでと、私達の目に見える領域を遙かに超えた波長域まで存在します。
これら異なったレーザーを使用する際に光学系は同一のものでよいのでしょうか? もちろん同じではいけません。波長が違えば違った光学系になりますし、同じ波長でもビーム径が違えばそれに適した光学系を揃える必要があります。
では違った光学系とはどのようなモノなのでしょうか?
最も注意するところはレンズとミラーの材質です。一般のレンズやミラーは可視光で使用するための設定で材質の選択が行われています。ですから可視光域と違ったレーザーを使用する際は材質に注意しなくてはなりません。レンズは光を効率よく透過させ、ミラーは光を効率よく反射させる必要があります。


光学材料と透過波長域
ミラーは通常表面反射ミラーを使用するので波長にあった反射コーティングを施せば良いのですが、レーザーによっては基板の選択にも注意が必要です。反射コーティングは自分たちで行うことはないので専門のメーカーにお願いすることとになりますが、その際にレーザーで使用することや出力も忘れずに指定する必要があります。いくら反射率特性は満足した製品でも耐レーザー性がないと、レーザーのエネルギーによってコーティングが剥がれてしまいすぐに反射率が落ちて機能しなくなってしまいます。
レンズについては光を透過させる必要があるので波長によって硝材(ガラス)の種類から選択する必要があります。通常の硝材では遠赤外線を透過させることが出来ません。そこで結晶材料が用いられます。ちなみにCO2レーザーではZnSeやKClなどが用いられます。逆に真空紫外域ではCaF2やMgF2といった結晶が用いられます。これら光学用結晶は取り扱いや加工が難しく、研磨加工も行えるところが限られています。200nm前後から1um近辺までは石英硝子(SiO2)が使用されます。光学材料としての石英硝子は合成石英と呼ばれる品質の高いタイプを使用しますが、合成石英にもいくつかの種類があり紫外域の透過特性の高いものや赤外域の吸収の少ないものなど用途によって選択が行えるようになっています。可視広域においてはBK7に代表される光学ガラスを用いることも有りますが、耐レーザー特性を考えて合成石英を使用したりもします。



反射ロスもレンズ枚数により増加
■コーティング
これらの材料を使ったレンズにも表面反射を抑えるためにARコート(Anti Reflection)と呼ばれるコーティングが施されます。通常コーティングを行わなければ表面で約4%の反射ロスが発生します。入射側と反射側で2度の反射ロスが起こります。これらをARコーティングにより1%以下にします。この際も反射コーティングの時同様にレーザーで使用することや出力も忘れずに指定する必要があります。もっとも十分にレーザーの出力がある場合にはコーティングをしないという考え方もあります。その場合には1面でのロスが約4%ですから透過する面の数だけロスすることを十分考慮してください。例えばレンズ3枚を透過させる場合には表面ロスは100%-96%×96%×96%×96%×96%×96%=78.3%とかなり光量が落ちてしまいます。
またレンズ、ミラーのどちらにも言えることですが大気中の浮遊物によりレンズやミラーの表面が汚れてきますので定期的なクリーニングを行ってください。知らない間に加工点への到達エネルギーが減っていると言うことになります。ただしクリーニングの際は細心の注意を払って行わないとかえって加工点への到達エネルギーを減らす原因になりかねませんから。