光のローカス
第8回 基本のレイアウト(その3)
今回はミラー(反射鏡)について考えてみましょう。(その1)

■折り返しミラー
レーザー光学系を単純に考えるとレーザー発振器を出たレーザー光は通常水平方向に進みます。これはほぼすべてのレーザー発振器で同じです。その水平に発振されたレーザー光をミラー(反射鏡)で折り返し、下向きにレーザー光の方向を変えます。そして下部にあるフォーカスレンズ(結像レンズ)に光を導き、結像レンズのさらに下部にあるワークにレーザー光をを照射し加工を行います。これが[図1]のもっともシンプルなレーザー光学系となります。(ファイバーカップリングのレーザーは直接レーザー光を下向きにすることができますからこの限りではありませんが。)このもっともシンプルな光学系でさえ、ミラーは使用されるわけですが、単純に光を反射する機能のこの全反射ミラーにもいろいろな種類があります。ここで言う種類とは、基板の材質、表面に成膜されるコーティングの材質の組み合わせのことを指します。形状は目的により異なる形状が存在しますが、伝送系と考えた場合はほとんど平面ミラーを使用するので種類には含めていません。


ミラー(反射鏡)で折り返し
■ミラー材質
まず、基板の材質ですが、これはレーザーの種類や出力、求める精度、反射率などを考慮して選ばれます。
基板材質
・アルミ(UV-VIS)
・銅(IR)
・シリコン(IR)
・モリブデン(IR)
・光学ガラス(ALL)
・石英ガラス(ALL)


ミラーの基板材質
アルミや銅、モリブデンに関しては保護膜をつけて直接、全反射ミラーとして使用されることもあります。銅、シリコン、モリブデンは熱量の高い高出力CO2レーザーで使用される材質で、その他のレーザーの場合は光学ガラスや石英ガラスが使用されることがほとんどで、アルミを使用することは希です。これら材質の使い分けとしては放熱性や融点の高さが関係しています。ミラーに熱が蓄えられると温度分布ができミラーがひずんでしまいます。もちろん目に見えるような大きな歪みではありませんが、光学的に考えれば考慮しなくてはならない歪みとなります。ミラーに歪みが発生するとレーザー光を正確に伝送できなくなります。例えば、歪みでミラーに曲率ができ平行光が発散光になったりすると、レーザー光の焦点位置がずれてしまい加工精度が落ちてしまいます。そのために十分な放熱効果や温度による変化の少ない材質が選ばれます。「すべてにこのような材料を使用すればいいのに」と思われますが、すべてにこのような材料を使用しないのは価格が高価なためです。
長くなってきたのでコーティングについては次回お話しします。